「怒らない子育て」への近道! 親子で学ぶペアレント・トレーニング
2026.05.06
子どものかんしゃくや親のイライラを減らす方法として注目される「ペアレント・トレーニング」。子どもの行動を「好ましい」「好ましくない」「許しがたい」の3つに分け、適切に対応することで親子関係を改善。年齢別の怒りの特徴や向き合い方など、怒らない子育てのための具体的なヒントを詳しく解説する。
1.親子でお互いに怒らないための「ペアレント・トレーニング」って?
2.感情的にならずに使い分けたい「3つの行動」への対処法
3.年齢別「怒り」の表現と向き合い方のポイント
4.こんなときは、どう対処するべき?「子どもの怒り」についてのQ&A
親子でお互いに怒らないための
「ペアレント・トレーニング」って?

そもそも、怒りが爆発しそうな状況を減らすためにはどうすればいいだろうか。それを学べるのが「ペアレント・トレーニング」だ。発達に特性がある子どもの親向けに始まったものだが、すべての子どもに有効だと言われる。その考え方と方法について紹介する。
子どもの行動を3つに分ける
基本は「いいところ探し」

ペアレント・トレーニング(ペアトレ)では、子どもの行動を「好ましい行動」「好ましくない行動」、そして、子ども自身や他人のケガ、物の破損などにつながる「許しがたい行動」の3つに分類する。この分類に基づいて対応することで、子どもの行動を望ましい方向へ導くことができる。
ここで大切なのは、その際に最も意識を向けるのは「子どものいいところ探し」だということだ。子育てに悩む親は、つい子どもの「困った行動」ばかりに目を向けてしまいがちだが、よく観察すると、子どもは「好ましい行動」も日常的に行っている。周りの子を見ると当たり前と思うようなことでも、その子にとっては精一杯頑張った行動もある。それを積極的に認めてほめてあげることが、ペアトレの第一歩となる。
子どもは誰でも「親に認められたい」「ほめられたい」という気持ちを持っているし、そういう中で誇らしさも感じられる。そのため、子どもは親からほめられる行動を自然と増やそうとする。好ましい行動をする時間が増えれば、好ましくない行動は自然と減っていくのだ。
「子ども本人の目的」に
対する行動を基準に
ただし、ここで気をつけたいのは、親が何を「好ましい」とするかという基準だ。親の都合や一方的な要求だけを「好ましい行動」に設定するのではなく、「あくまで本人にとって伝えたいこと、やりたいことがあって、それに対して適切な行動ができているかというところに基準を置くことです」と岡田先生。例えば、子どもが「一緒に遊んでほしい」という気持ちを持っているとき、「ねえ、一緒に遊ぼう」と言葉で伝えられれば「好ましい行動」である。しかし同じ気持ちでも、服を強引に引っ張ったり、ちょっかいを出したりして気を引こうとするのは「好ましくない行動」になる。どちらの行動も、根底にある子どもの気持ちは同じなのだ。だからこそ、その子の気持ちや意図を理解した上で対応することが重要となる。
つまりペアトレを行う上では、子どもの表面的な行動だけでなく、その背景にある感情、気持ちやニーズを理解した上で行うことが重要だ。そうすることで、子どもだけでなく親自身にも変化をもたらす。子どもの行動の見方が変わり、ポジティブな部分に目を向けられるようになることで、親のストレスも軽減されるのだ。イライラして叱ることが減れば、子どもの怒りやかんしゃくも自然と減少するという好循環が生まれるのである。また、こうした対応を行う際は、家族間で対応を統一することも重要だ。家族で話し合い、一貫した対応を心がけよう。
感情的にならずに使い分けたい
「3つの行動」への対処法
ペアレント・トレーニングで子どもの行動を「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」の3つに分類したとき、それぞれにどのような対処が望ましいのか、具体的な例を紹介する。
「好ましい行動」の対処法

「好ましい行動」とは、主に子どもが自分の気持ちや要求を適切な方法で表現したり、子ども自身にとって大切な約束やルールなどを守れている行動のことだ。例えば、お腹が空いたときにちゃんと言葉で伝える、行列に並んで順番を待つ、ゲームをやめる時間を守る、などが該当する。このような好ましい行動に対しては、積極的にほめることが基本となる。「お腹が空いたって教えてくれてありがとう」「時間を守れたね、えらいね」など、具体的に何がよかったのかを伝えることが大切だ。特に、普段から問題行動が多い子どもこそ、わずかな好ましい行動も見逃さずほめることがポイントとなる。どんな小さな成功体験も、子どもの自信につながるからだ。
「好ましくない行動」の対処法

「好ましくない行動」とは、主に不適切な方法で自分の要求を伝えようとしたり、ルールや約束を尊重しない行動が該当する。泣いて駄々をこねる、ゲームをやめない、などが含まれる。このような行動に対しては、『計画的無視』と『CCQ』が有効だ。
『計画的無視』とは、大声や駄々こねなどの理不尽な行動に対して、取り合わずにスルーするということ。子どもの存在や普通の会話を無視するわけではないのでご注意を。そして『CCQ』とは、「Calm(落ち着いて)、Close(近くで)、Quiet(静かに)」対応することだ。例えば「いつまでゲームやってるの!!」と怒鳴るのではなく、そっと肩に手を触れ、「そろそろやめる時間じゃない?」と穏やかに声をかける。もしやめられたら即座にほめよう。
「許しがたい行動」の対処法

「許しがたい行動」とは、主に自分や人を傷つけかねない行為や、物を投げるなど乱暴な行為が該当する。こうした行動はすぐに制止し、子どもを刺激の少ない場所(自分の部屋など)に移動させて、落ち着くための時間を与える『タイムアウト』という方法がある。ただし、岡田先生は「タイムアウトは乱発しないでください。基本的には、ほめ方の工夫や計画的無視で子どもの行動を変えていくのが基本です」と注意喚起する。タイムアウトは「罰」ではなく、「感情をコントロールするための休息」というお互いの理解が重要である。「タイムアウトを行う際は、事前に子どもと話し合い、『こういう行動があったときには、ここで落ち着く時間を持とう』などと合意しておくことが大切です」と岡田先生は言う。実際にその行動が起きたときには、感情的にならず、「約束通り、部屋で落ち着こうね」と静かに伝える。約束を守って落ち着くことができたら、それを認めてほめてあげよう。
成長に合わせて「怒り」は変わる
年齢別「怒り」の表現と
向き合い方のポイント
年齢を重ねるごとに、怒りの表現や親の向き合い方は変わっていくもの。ここでは、岡田先生に聞いた、各年齢で起こりやすい怒りの表現と、望ましい対処法について紹介する。
2〜3歳(イヤイヤ期)

自我が芽生え、「イヤ」「ダメ」と自己主張することが増える時期。言葉での説得は難しいが、「欲しいんだね」と気持ちは認めつつ、「でも今は買わないよ」と、ダメなものはダメときっぱり伝えよう。また、本人が気持ちを切り替えた後に適切な行動を取れたら、ほめてあげることを意識しよう。
4〜5歳

自分の行動範囲が広がり、試行錯誤する中で不安や失敗を経験する時期。だからこそ、子どもの自我を尊重し、気持ちを汲み取ることが重要になる。また、気持ちの言語化のサポートもしていきたい。「子どもと同じ目線に立ち、『これが嫌だったんだね』『これに興味を持ったんだね』と、子どもの気持ちを言葉で表現してあげることが大切です」と岡田先生。
6〜9歳

社会的なルールを理解し始める時期。怒ってしまったときは、その行動が好ましくない理由をわかりやすく説明し、怒らずに頑張れたときはしっかり評価することが大切になる。自分で落ち着けたことや、「お母さんは疲れているから後でね」と言ったら待ってくれたなど、人の気持ちを思いやれたことに気付いたら、「ありがとう、嬉しかったよ」としっかり伝えてあげよう。
10歳~

感情コントロールの力が上達してくる時期。自分の意思や自尊心も育ってくるので、まずは本人の言葉に耳を傾け、思っていること、考えていることを尊重する姿勢が大切だ。また、学校で友達に怒ってしまったなどのトラブルが起きたときは、相手や先生の話だけでは偏っていることも。本人にも「場所はどこ? 誰がそこにいたの?」などと状況を詳しく聞き、「そこが辛かったんだね」と怒った理由を理解してあげることで信頼関係を築こう。
岡田先生からのメッセージ
「パパ・ママは自分を責めないで」
子どもの怒りやかんしゃくは、パパやママの心のゆとりを奪い、自分自身を責めてしまうこともあると思います。しかし、ご両親が自分を責めても解決にはなりません。それよりも、「どこから悪循環を断ち切っていくか」を考えることが大切です。また、怒りやかんしゃくはありふれたものですが、そのレベルはさまざまで対処が難しい場合もあります。まずはパートナーと共有し、次に保育園・幼稚園や学校の先生に相談する。その次の手として、児童相談所など専門の相談機関を利用するのもおすすめです。1人で抱え込まず、必ず周囲のサポートを得ましょう。
こんなときは、どう対処するべき?
「子どもの怒り」についてのQ&A

怒りがきょうだいの
下の子に向きがち。
どのように対処したらいい?
それぞれの子どもの個別の心情を理解してあげることが大切です。上の子が下の子を怒る行動の背景には、親の真似のつもりだったり、自分も甘えたい気持ちがあるかもしれません。まずは、なぜ怒っているのかをよく観察して。その上で、それぞれ1人ずつとの時間を持ち、個別に話を聞いて対応することを心がけましょう。
夫や親などが
子どもに怒ってしまう。
どうしたらいい?
大人も、心のゆとりがない時には感情的になりがちです。自分やパートナーが必要以上に怒ってしまっていると感じたら、親自身に精神的なゆとりがないのではないかという視点を持つことが大切です。最近は核家族化で、周囲に子育てをするモデルがない場合も多いもの。怒りに限らず、子育てに悩んだら専門機関に相談しましょう。まだ実施している機関が限られてはいますが、ペアトレやPCIT(親子相互交流療法)など、子どもとのコミュニケーション方法を学べるプログラムも広がりつつあります。
怒りは何歳くらいから
自分で抑えることが
できるものですか?

一般的には小学校の中学年から高学年頃に感情コントロールの力が発達しますが、性格や特性による個人差が大きいものです。前頭前野の発達とともに少しずつ抑える力がついていきますので、焦らずにその子のペースを尊重してあげましょう。
怒りから周りの
子どもとトラブルになりがち。
どう収めるべき?

怒りから起きてしまった結果だけでなく、どういう感情や状況が背景にあったのかを探りましょう。おそらく、「本当は友達になりたい」「もっとうまくやりたい」などの気持ちが隠れているので、そこを理解してあげましょう。パパ・ママだからこそ、自分の子どもは単に怒りっぽいのではなく、「怒るにはそれなりの理由がある」と信じてあげることが大切です。
教えてくれた人
児童精神科医
岡田俊先生

奈良県立医科大学精神医学講座教授。京都大学医学部卒。京都大学医学部附属病院精神科神経科、同デイケア診療部、名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所を経て現職。日本児童青年精神医学会代表理事。著書に『子どものこころの薬ガイド』(日本評論社)他。
文:笹間聖子
Kids Well-being VOL.22(2025年夏号)より転載
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