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【コラム】失敗とチャレンジを経験する練習【栄枝慶樹】

小学生からメジャーリーガーまで、野球を通して“21世紀型人間力”を育むことを実践している栄枝慶樹さんの連載コラム。監督として弱小チームをアジア3位まで躍進させた栄枝さんが語る「失敗とチャレンジを経験する練習」とは?

 

野球の練習を頑張っても
運動能力が伸びない!?

スポーツをしていれば、運動能力は伸びる――誰しもそう思うでしょう。ところが、運動能力を「思い通りに身体を動かせる力」だとすると、少なくとも野球に関しては、子どもは頑張って練習しているのに、運動能力が十分伸びていないケースがあります。その原因を一言で言うと、「子どもに失敗させない指導」にあります。

子どもは〝失敗ミス〞をたくさんするため、指導者は「ミスを防ぐべきだ」と考えがちです。そこで、例えば球を捕る時は、「ここに構えて、こう捕りなさい」と型を教え込んで、なるべく失敗させないようにする練習が、ジュニア野球ではよく行われています。

確かに、その方がどんな子でも平均的に球を捕れるようにはなります。でも、そうやって型にはめてミスを防ごうとする練習には、大きな問題点が3つあるのです。
 

「子どもに失敗させない指導」の3つの問題点

1つ目は、上達のために本当に必要な〝感性〟を磨けなくなってしまうことです。「球を捕る(又は打つ)」ために一番大切なものは、フォームではなく、タイミングを合わせるためのリズム感や空間認知といった、いわば〝感性〞のようなものです。フォームを型にはめる練習では、そうした感性は養えません。

2つ目は、試合中に全体の状況が見えなくなることです。そもそも球を捕るのは、多くの場合、捕ってから球を投げてランナーをアウトにするためです。でも「ミスせずに球を捕る」が念頭にあると、確実に球が捕れる場所とフォームで捕ろうとして「セーフ!」なんてことが本当に起こります。

そして3つ目、これが一番問題なのですが、子どもが失敗を怖がるようになってしまい、チャレンジできなくなることです。指導者の顔色をうかがって、失敗しそうなときは逃げに入ってしまったり、「失敗しちゃいけない」というプレッシャーでかえってミスをすることすらあります。

こうした問題によって、真面目に練習する子ほど試合で結果を出せないということが、実際によく起こっています。
 

「失敗とチャレンジ」を
たくさん経験する練習

では、どう練習すればいいのか。僕のチームでやっているのは、「練習に試合の要素を入れて、たくさん失敗を経験すること」です。例えば捕球なら、「確実に捕る」ではなく「投げるために捕る」をテーマに、あえていろいろな姿勢で「捕って、投げる」を繰り返します。捕り方・投げ方はある程度は教えますが、フォームを型にはめたりはしません。代わりに、どうしてこういう練習をするのか、意味をきちんと伝えて、その上で自分で考えて取り組んでもらいます。

すると、当然失敗もばんばんしますが、その都度自分で考えながら、チャレンジして、失敗して、また考えて再チャレンジします。そうやって練習で失敗をたくさん経験していると、試合中の「失敗しちゃいけない」という余計なプレッシャーもなくなります。すると、試合中にもチャレンジできるようになっていき、本番に強くなっていくのです。

強い相手にわくわくするのがスポーツの楽しさ

そもそも、指導者がミスをさせまいとするのは「勝とう」と思っているからです。もちろんスポーツは勝利を目指すのがルールですが、特に子どものスポーツでは、運動能力や非認知能力を育てることを最も重要な目的にすべきだと、僕は思っています。

勝たないと楽しくないのでは、と思うかもしれません。でも、試合でも失敗を恐れずチャレンジできるようになると、ドラゴンボールの悟空みたいに、自分より強い相手との試合を「わくわくすっぞ!」と楽しめるようになります。それが、本来のスポーツの楽しさだと思うんです。勝とうとして失敗を避けるのではなく、スポーツを「失敗とチャレンジをたくさん経験できるチャンス」にしてほしい。逆説的ですが、それこそが〝勝つ力〞にもつながっていくし、運動能力と非認知能力を伸ばすという本来の目的にもつながっていくはずです。
 

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栄枝慶樹さかえだけいき

 
栄枝慶樹
 
プロ野球エージェント会社DIAMOND ALLIANS代表取締役社長。今永昇太(シカゴ・カブス)や源田壮亮(西武ライオンズ)ら多くのトッププロ選手を支える。学生時代は主将・4番としてチームを牽引。母校・学習院高等科の監督をはじめ、ジュニア野球・中学野球と幅広いカテゴリーで監督を歴任。ポニーリーグのU10日本代表監督時にはアジアチャンピオンに輝く。

DIAMOND ALLIANS:sports-da.com
Instagram:@keiki_sakaeda

 

DAアカデミー

プロ野球選手のトレーナーも務める専門家による、子ども向け“科学的”野球アカデミー。セミパーソナル形式で、個人個人に特化した課題に寄り添い、解決に導く。
(東京3ヶ所・千葉・埼玉・兵庫・北海道)
 

 

KIDS FIT

栄枝さん監修の、運動を通し非認知能力を高めるプログラム。スポーツクラブ・ルネサンスの各店舗で実施中。
 

写真/杉並中野GALAXY
取材・文/征矢里沙

Kids Well-being vol.03 2026年秋号より転載

 

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