“頭のよさ”と非認知能力を伸ばす方法。子どもの「好き」「得意」を見つけて活かす
2026.03.24
“頭のよさ”は テストで測れるもの? 子どものウェルビーイング(幸せ)にとって、自己肯定感や意欲、やり抜く力といった非認知能力を育てることは大切だ。一方で、いわゆる“頭のよさ”もやはり重要だ、と考える親は多いだろう。 そ […]
“頭のよさ”は
テストで測れるもの?
子どものウェルビーイング(幸せ)にとって、自己肯定感や意欲、やり抜く力といった非認知能力を育てることは大切だ。一方で、いわゆる“頭のよさ”もやはり重要だ、と考える親は多いだろう。
そもそも、“頭のよさ”とは何なのだろうか。一般的には、“頭のよさ”はIQテストで測れるもの、と理解されることが多い。ところが、「テストで測れるのは、“頭のよさ”のごく一部の側面です」と、小児神経科医の本田真美先生は語る。「IQテストの項目は、言語能力や推論能力、処理速度など。つまり、こちらが言ったことを正確に理解して素早くやってくれるという、いわば受動的に処理する力です」。これはAIの得意分野でもあり、これからの時代に求められているクリエイティビティや、答えのない問いを自分で考える力は測ることができない。
IQ(知能指数)テストって
何を測ってるの?
<5~16歳向けの代表的なIQテスト『WISC-V』の場合>
言語理解
例 ●類似:2つの言葉の共通点を答える(ex.犬と猫)
●語彙:単語の意味を説明する
視空間
例 ●積木模様:ブロックで図形を再現する
●視覚パズル:図形を組み合わせて正解を選ぶ
流動性推理
例 ●行列推理:図形のパターンの法則を見抜いて選択
●絵の概念:共通点のある絵を選ぶ(ex.仲間はずれ探し)
ワーキングメモリ
例 ●数唱:聞いた数字を順番通り・逆順で言う
●語音整列:聞いた数字と文字を順序に並べて言う
処理速度
例 ●符号:記号をルールに従って素早く書く
●記号探し:図形の中から特定のマークを見つけて印をつける
⇒クリエイティビティや、答えのない問いを自分で考える力などは測ることができない
“頭のよさ”とは
自分の「得意」を活かせること
ハーバード大学のハワード・ガートナー教授は、『多重知能(マルチプルインテリジェンシーズ)』という理論を提唱した。人間には、言語的知能、論理・数学的知能、音楽的知能、身体運動的知能、空間的知能、対人的知能、内省的知能、博物的知能という8つの知能が備わっているというものだ。これは「非認知能力」という概念が広まる以前に提唱された理論で、現在では非認知能力と呼ばれる領域も含まれているが、どちらも「IQだけを重視すること」への問題意識が背景にある。
「大切なのは、偏ったモノサシにとらわれずに、自分の『好き』や『得意』を見つけて活かしていくこと。それができることが、これからの時代の“頭のよさ”なのではないでしょうか」。
ガードナーの
“多重知能理論”とは

多重知能理論(Multiple Intelligences Theory)は、1983年にハーバード大学の心理学者・教育学者ハワード・ガードナーが提唱。人間には、従来の学校教育の主流である「言語」や「論理・数学」で考え表現する力だけではなく、視覚的・空間的に理解して表現する力(空間的知能)や、音楽やリズムを感じ取り表現する力(音楽的知能)など、多様な知能や賢さがあると主張した。
⇒自分の「好き」や「得意」を見つけて活かしていけることが、これからの時代の“頭のよさ”
子どもの好き・得意を活かす
ヒントとなる『認知特性』
子どもの「好き」や「得意」を見つけ、活かすためのヒントとして、本田先生が提唱しているのが『認知特性』だ。認知特性とは、見る、聞く、読むことでインプットした情報を、理解、整理、記憶し、文字や言葉、絵や図などでアウトプットするまでの一連の方法のこと。認知特性にはさまざまなタイプがあり、タイプが違えば、物事の見え方がまったく違うという。
「従来の学校の授業は、先生が話す、黒板に書く、教科書を読むなど、『言葉』を使って教えることがメインでした。これは『言語』という認知特性に偏っており、それ以外の認知特性を持つ子には不利なんです。その成績だけで評価され、自信を失ってしまえば、本来持っている能力も開花できなくなってしまいます」と本田先生。子どもの「好き」や「得意」を見つけ、伸ばしていくために、認知特性を知ることは大きなヒントとなる。また、「学校はもちろん社会に出ても、得意なことを活かすために、苦手なことも必要な場面は必ずあります。そんなときも自分の『認知特性を生かした方法』がわかれば、ぐっと乗り越えやすくなります」と本田先生は語る。
子どもの可能性を伸ばすヒント
6つの「認知特性タイプ」とは?
認知特性には6つのタイプがあるという。まずは各タイプの特徴について理解した上で、子どもや自分の認知特性をチェックしてみよう。
認知特性は「思考の好み」
認知特性は、大きく3つのタイプに分けられる。「言葉」を使うのが得意な言語優位、「イメージ」を使うのが得意な視覚優位、「音」を使うのが得意な聴覚優位。さらにそれぞれを2つに分け、6タイプとされている。もちろん、例えば視覚優位の人は目でしか理解していない、というわけではない。ただ、視覚で理解するのが一番スムーズでやりやすいという、いわば「思考の好み」だ。
本田先生が認知特性の違いに気がついたのは、夫や子どもが自分とは全く別の思考方法を持っていたことがきっかけだったという。「息子の小学生時代は、『なんでこの子は勉強ができないんだろう』と本気で悩んでいたんです。でも、それは息子が自分の優位な認知特性を活かせていなかっただけ。そして、私が1つのモノサシで測ろうとしていただけでした。視覚的なイメージを通して理解し表現することが得意な息子は、20歳となった今、ファッションデザイナーを目指して毎日生き生きと学んでいます」。
さまざまな認知特性の違いを知ることは、子どもや家族、他者を理解し、尊重することにもつながるはずだ。
視覚優位:見る力の強さ
カメラタイプ
目で見た情報を処理するのが得意で、写真のように二次元で情報を捉え、思考する。物事を見た通りに記憶することができ、言葉の発達以前の記憶を写真のように覚えていることも。アウトプットするときも、自分の考えやイメージを絵や図で表現するのが上手なことが多い。
視覚優位:見る力の強さ
3Dタイプ
目で見た情報を処理するのが得意で、映像のように時間軸を加えて記憶したり、見たものを空間的な奥行きも含めて捉えることが得意。人の顔をすぐ覚え、表情や見る角度が違っても見分けられたり、平面の図面から立体をイメージして、頭の中で回転させるようなことも容易にできる。
言語優位:ことばの強さ
ファンタジータイプ
文字や文章を読んで理解するのが得意で、小説を読むと場面を映像のようにありありと想像できる。逆に、見たものを言語化することも得意。読んだり聞いたりした話をリアルにイメージして、まるで自分が体験したように人に話すこともできる。比喩や例え話も上手。
言語優位:ことばの強さ
辞書タイプ
文字や文章を読んで理解するのが得意で、難しい文章を頭の中で図式化して理解したり、言葉を整理して要点をまとめることができる。「言葉を見る」のが好きで、音として聞くよりも、紙に書いたり、書いてある字を見た方が覚えやすい。過去の記憶も、言語で認識したことと一緒に思い出す。
聴覚優位:聴く力の強さ
ラジオタイプ
耳で聞いて情報処理することが得意で、聞いた話を瞬時に理解して記憶できる。情報を聞いて覚え、考えるときには言語を使う。「言葉を聞く」のが好きで、文字を読むより、耳から聞いた方が覚えやすい。音韻をよく理解できるので、替え歌やダジャレも好き。人のせりふを声と言葉の両方で覚えている。
聴覚優位:聴く力の強さ
サウンドタイプ
耳で聞いて情報処理することが得意で、言葉よりも「音」自体を捉えることができる。音階や音色を細やかに認識し、イメージを音で表現できる。人の声色や抑揚まで再現できるので、声まね、ものまねも上手。外国語の発音もキレイで、歌詞の意味がわからなくても外国語の歌を覚えられる。
親子でやってみよう!
認知特性タイプ診断
子ども向け 本田3歳式認知特性テスト
低年齢の子どもの場合は、まずは3つのタイプに分ける診断テストがおすすめ。3歳を目安にしているため、3歳の頃を思い出してチェックしてみよう。当てはまる数が1番多いのが、その子の優位性の高い認知特性だ。
視覚優位:見る力の強さ
□ 人見知りが強い
□ 場所見知りが強い
□ 絵本や図鑑を眺めるのが好き
□ 空想イメージにとらわれて、必要以上に怖がることがある
□ モノをよく眺めている、さまざまな角度や横目で眺める、
□ くるくる回るものが好き
□ おもちゃを色や形、大きさなどで分類して遊ぶのが好き
□ 電車、ミニカーが好き。車体の一部を見て、車名やメーカーがわかる
□ パズルやブロック、積み木遊びが好き
□ 一度行った場所や道順を覚えている
□ モノの位置や場所にこだわる
当てはまった数___個
言語優位:ことばの強さ
□ 話し始めたらおしゃべりだ
□ よく話すが、聞き間違いや言い間違いもある
□ 「あれ、何?」「これ、何?」と質問攻めにする
□ 理論的な説明を理解できる
□ 時間や時計に興味を持つ
□ 想像や空想遊び、物語を作るのが好き
□ 保育園や幼稚園であったことを、順序よく説明できる
□ 嘘をつくことがある
□ 文字に対する興味・関心が高い
□ なぞなぞが得意
当てはまった数___個
聴覚優位:聴く力の強さ
□ 遠くのサイレンなど、小さな音にもよく気がつく
□ 大きな音や特定の音を怖がる、いやがる
□ 言葉を話すのが早かった
□ 独り言を言う
□ 音楽に合わせてからだを動かす。リトミックが好き
□ 大人びた表現を使うことがある
□ CMのセリフや歌を覚えて繰り返す
□ 歌を歌うことが好き
□ 読み聞かせをした本のセリフを空で言う
□ 擬音語、擬態語をよく使う
当てはまった数___個
出典:『子どもの「ほんとうの才能」を最大限に伸ばす方法』(著/本田真美、河出書房新社)
大人向け
本田40式認知特性テスト
大人向けには、40の質問をもとに、6つのタイプのどれかを診断するテストがある。以下からアクセスして、本田式認知特性研究所の公式LINEアカウントに友だち登録することで、無料で診断ができる。パパ・ママが自分の認知特性を知ることは、親子や夫婦でのコミュニケーションにも役立つはず。ぜひチェックしてみよう。
教えてくれた人
小児発達医
本田 真美さん

医学博士、小児科専門医、小児神経専門医。東京慈恵会医科大学卒。小児専門病院や療育センターなどを経て、みくりキッズくりにっく、あのねコドモくりにっく、および認知特性に関する研究を行う「本田式認知特性研究所」を設立。著書多数、最新刊に『子どもの「ほんとうの才能」を最大限に伸ばす方法』(河出書房新社)。

文:征矢里沙
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