親子で一緒に取り組もう! 幸せになるためのアンガーマネジメント入門
2026.04.29
「なぜこんなに怒るの?」「どうしたら落ち着いてくれるの?」子どもの怒りやかんしゃくに悩むパパやママは多い。子どもが怒りを上手に扱えるようになるためのヒントを、児童精神科医の岡田俊先生に聞いた。
子どもの怒りやかんしゃくが
起こるメカニズム
子どもたちは日常生活の中で、自分の欲求が満たされないときや報酬を先延ばしされたとき、不安や恐怖を感じるときにネガティブな感情が高まる。しかし、幼い頃にはネガティブな感情をうまくコントロールする力がまだ弱い。ある程度年齢を重ねると気持ちを抑制する力が発達してくるが、気持ちの高まりやすさやコントロールする力の発達にも個人差がある。また、言葉で表現したり、自分の思いを伝える力も未熟だ。これらの理由からネガティブな感情が爆発的に高まり、その抑制がうまくできない場合に、怒りやかんしゃくという形で現れやすい。
児童精神科医の岡田先生は、「子どもの怒りやかんしゃくは、相手を威嚇したり傷つけたりしたいがためにやっている行動ではありません。怒りの背景には、やりどころのない悲しみや納得がいかない不甲斐なさなど、複雑な感情があります。しかし、そういった自分の気持ちを受け止めたり、表現することができないのです」と説明する。
脳の発達から見てみよう。脳には情動の座といわれる「扁桃体」がある。怒りの瞬間にはこの扁桃体が活性化する。しかし、ほぼ同時に「前頭前野」の働きが活発になり、感情の爆発的な高まりを抑えてバランスを取っている。しかし、子どもでは、前頭前野の機能がまだ発達途上であり、抑制にわずかにタイムラグが生じてしまう
のだ。このタイムラグの生じやすさには個人差がある。しかし、おしなべて前頭前野の機能は年齢とともに発達していくので、子どもの頃に比べて大人は怒りのコントロールがしやすくなっていくという。
親に怒りをぶつけるのは
信頼されている証拠
では、子どもが親に怒りをぶつける理由は何だろうか。実は、これは親に対する愛着や信頼の結果でもあるという。「自分の欲求や不満を親にぶつけるのは、『親が自分のニーズに答えてくれる』『親が自分の不安や緊張をやわらげ心を満たしてくれる』という信頼が前提にあるからこそです。まったくの第三者には期待もしないので怒りも向かないのです」と岡田先生。だからこそ、その期待が裏切られると怒りやかんしゃくにつながってしまうのだ。
また、怒りの表出の激しさは子どもによって異なる。感情表出が激しい子、こだわりの強い子、感情コントロールが苦手な子どももいる。そこには生まれつきの個性や気質の違いもある。
覚えておきたいのは、子どもが怒りっぽいのを親の責任だと考えて、自分の子育てを責めたとしても何も良い結果はもたらさないということだ。
「子どものかんしゃくは親のゆとりを奪い、親子ともに怒りっぽくなってしまうことがあります。心ない言葉を言ってしまったと落ち込むパパ・ママもよくいらっしゃいます。でも、親の責任だと思い悩んでも、かえって余裕のない子育てになるばかりです。必要なのは、親も子も怒りをエスカレートさせないための「アンガーマネジメント」を知っておくこと。親が子どものかんしゃくに落ち着いて対応するためのスキルを手に入れることが大事です」と岡田先生は語る。次に、その具体的な方法を紹介する。
岡田先生監修
子どもと怒りについて一緒に学べる絵本
『かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった』

作/新井 洋行 監修/岡田 俊 出版社/パイ インターナショナル
怒りとのつきあい方を、かわいいかいじゅうの姿を通してわかりやすく教えてくれる絵本。主人公の怒りんぼかいじゅうポポリが友だちと大げんかをした後、怒りのマスターかいじゅうプワイズとの出会いを通じて、自分の気持ちと向き合う方法を学んでいく。
ユーモアあふれる物語の中で、怒りが爆発しそうになったときにどうすればいいのか、気持ちをコントロールするためのヒントが満載。親子で一緒に読んで、感情とのつきあい方について語り合うきっかけにしてみては。

子どもがかんしゃくを起こしたらやってみよう
怒りを鎮めるための「3つのルール」
ここでは、怒りのメカニズムを理解した上で実践できる、3つの効果的なルールを紹介する。親自身の感情コントロールから始まり、子どもの気持ちに寄り添うまでの具体的な方法を知っておこう。
ルール1 まずは親が冷静になり、
落ち着ける場所へ

子どもがかんしゃくを起こしたとき、子どもよりも、まず親自身が冷静になることが重要である。親の感情が高ぶると、子どもの怒りもエスカレートするからだ。ショッピングモールなど人が多い場所で子どもがかんしゃくを起こすと、周りの目を納得させるために厳しく対応してしまうケースもある。親自身も怒ってしまうことで火に油を注がないためにも、まずは親が一呼吸置いて、自分の冷静さを取り戻そう。周りの目が気になる場合は、もっと静かな環境に移動して対応することも効果的。無理に制止しようとせず、感情的に反応せずに、子どもの怒りが落ち着くまで見守る姿勢が大切だ。
ルール2 怒りを鎮めるために
報酬を与えない

怒りを鎮めるために、その場しのぎの報酬を与えないことも重要だ。例えば、おもちゃ屋さんでおもちゃが欲しいとかんしゃくを起こした子どもに「お菓子を買ってあげるから」となだめたとしよう。すると、その子は、「かんしゃくを起こすことによって報酬が与えられる」ことを学んでしまう。かんしゃくを起こすことで欲求を通そうとしている際には、そのことには反応しない態度が大切。これを『計画的無視』と呼ぶが、無視するという意味ではなく、その行動を強めてしまうような反応はしないということだ。かんしゃくが落ち着いたら、自分の力で落ち着けたことをすぐにほめよう。「子どもは親にほめられる行動をしたいもの。減らしたい行動をした時に反応しないことで、その行動が減っていきます」と岡田先生。
ルール3 怒っていた理由を
一緒に確認し、共感する

子どもが落ち着いたら、なぜ怒っていたのかを一緒に確認しよう。その理由は子ども自身もわかっていないことが多い。しかし、時系列で経過を振り返ると、子どもが怒った理由が見えてくることもある。「それは悔しかったね」「それは悲しかったね」と親が共感して代弁することで、子どもは自分の感情が受け入れられていると感じて安心できる。
子どもに合わせてやってみよう
怒りの爆発を防ぐ「コーピング行動」とは?
怒りの波がやってきたとき、それに対処しうまくやりすごすためのコツを「コーピング」という。怒りをやりすごす方法は、1人ひとり異なるもの。パパ、ママがサポートしながら、その子に合った方法を一緒に探してみよう。
第一波をやりすごし
本当の気持ちに向き合う
「コーピング」とは、ストレスに対処するための行動やプロセスのこと。大人がストレス解消のために「コーヒーを飲む」「カラオケに行く」「旅行に行く」などの行動をするのもコーピングの一種である。そして、怒りの第一波を自分でやり過ごし、自分の本当の気持ちに向き合うための技術もコーピングの一つだ。感情の高まりをいったん横に置き、怒りを爆発させずに踏みとどまるための方法である。
怒りをやりすごすコーピングの方法は、一般的には「5~10秒数えるといい」などと言われるが、何秒我慢すれば絶対落ち着けるということではない。かかる時間は子どもの性格や状況によってさまざまで、やりやすい方法もいろいろ。「水を飲む」「深呼吸する」「布団にくるまる」「部屋の隅っこに行く」など、その子ならではの落ち着き方を見つけてあげることが大切だ。
どんなときに安心できるか
話し合ってみよう
その子ならではの落ち着き方を見つけるために、家族で「どんなときに自分が安心できるか」を話し合ってみよう。親が先にどんなときに落ち着くかを伝え、子どもが落ち着くきっかけについて話してくれたら、「そうすると安心できるんだね」「それで落ち着くんだ、いいね」などと共感する言葉をかけてあげよう。
次に、例えばピンク色が落ち着くという子どもなら、「目をつむって、ピンク色に包まれている自分を想像できるかな?」と声をかけてみたり、布団にくるまるのが好きな子どもなら、「お布団にくるまって、お団子みたいになっている状態を想像できる?」などと伝え、想像する練習をしてみよう。
そうして、実際に怒ったときに実践したり、想像をすることで落ち着けたら、たくさんほめてあげるのがポイントだ。失敗しても、挑戦したことをほめた上で、落ち着ける方法をまた一緒に考えてみよう。
家族で考えてみよう
怒りをスルーするための、
わが家の「コーピング」

教えてくれた人
児童精神科医
岡田俊先生

奈良県立医科大学精神医学講座教授。京都大学医学部卒。京都大学医学部附属病院精神科神経科、同デイケア診療部、名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所を経て現職。日本児童青年精神医学会代表理事。著書に『子どものこころの薬ガイド』(日本評論社)他。
文:笹間聖子
Kids Well-being VOL.22(2025年夏号)より転載
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