専門家に聞く! 自治体・企業・教育機関などでのウェルビーイングな実践最前線
2026.09.23
現場では具体的にどのような取り組みが行われているのだろうか。ここからは実際に「ウェルビーイング」を実践している自治体・企業・教育機関について、吉田さんや編集部が注目する10件をピックアップして紹介する。
自治体の実践最前線
近年、政府は政策のKPIにウェルビーイング指標を取り入れる動きを進めています。デジタル庁も地域幸福度(Well-Being)指標のダッシュボード整備など利活用支援を拡充し、自治体の取り組みを後押しする国の動きが具体化しています。
【福井県】
幸福度日本一のその先へ
官民共創でウェルビーイング

統計データの総合評価による『都道府県別幸福度ランキング』(日本総合研究所)で、2024年まで6回連続12年間日本一。また、住民の幸せ実感を測る『ウェルビーイング調査』(デジタル庁)でも2025年に全国1位を記録。教育や子育て支援の充実、共働き率の高さ、自然や生活環境の豊かさといった特徴や、北陸新幹線の開通による賑わいなどが、県民の幸福度の高さにつながっている。現在は「幸福度日本一のその先」を目指し、官民共創で幸福実感向上を目指すラボ「ふくウェル」を設置。大学や企業・団体、市町とともに、ウェルビーイング向上のための研究や地域プロジェクトを県内各地で展開している。
【富山県】
「幸せ人口1000万」を掲げ、
ウェルビーイング指標を策定

指標を花に見立てて可視化
富山県は、2022年より県政の中心にウェルビーイングを据え、「幸せ人口1000万~ウェルビーイング先進地域、富山~」というビジョンのもと、ウェルビーイング向上による関係人口創出や経済成長の好循環を目指している。また、県独自の「ウェルビーイング指標」を策定し、県民に寄り添ったきめ細かな施策の立案に活用している他、特設サイト『富山県 わたしの、みんなのウェルビーイング・アクション!』を運営し、県民がウェルビーイングを「自分事」として意識・行動してもらえるよう普及促進に努めている。特設サイトには、自身のウェルビーイングをゲーム感覚で確認できるページも掲載されている。
【千葉県流山市】
親を支えるインフラが
子どもの笑顔を育む

「母になるなら、流山市。父になるなら、流山市。」という印象的なキャッチコピーを掲げ、子育て世代のウェルビーイングをまちづくりの中心に据える自治体。同市の施策を象徴するのが、全国的にもユニークな「駅前送迎保育ステーション」。これは、親が通勤途中の駅前で子どもを預けると、専用バスで市内各地の指定保育園へ送迎し、夕方も保護者が迎えに来るまでステーションで預かるという画期的な仕組みだ。また、「都心から一番近い森のまち」として緑豊かな住環境を整え、利便性と自然の癒やしを両立。自分らしい人生を歩める環境により、親がウェルビーイングを感じられることが、子どもたちの安心感と笑顔を支える揺るぎない土台となっている。
【山口県】
ウェルビーイングに
着目した人づくり

山口県では、ウェルビーイングを子育てや教育につなげる取り組みを進めている。子どもや若者の自己肯定感や協働力を育成するプログラムの展開により、ウェルビーイングに着目した人づくりを推進。誰もがフリーで使える教材を作成し、子ども・若者向けワークショップを実施する他、人づくりを担う教育・保育関係者向けには、この教材の活用方法を学ぶ研修会も開催している。さらには、県内の若者が自分なりの幸せを語り合う「しあわせ会議」も開催され、対話を通じて地域の価値や暮らし方を見つめ直す機会を創出するなど、教育と暮らしを横断した支援が、子どもや若者たちの心と学びの豊かさにつながっている。
企業の実践最前線
様々な研究で「ウェルビーイングの高いチームほど成果につながりやすい」ことが示されています。企業の取り組みでは、経営トップの決断と、社員と丁寧に対話しながら制度を設計・運用することが効果を高めると実例から感じています。
【LY Corporation (LINEヤフー) 】
健康宣言と制度で、
働くWell-Beingを設計

従業員の心身の健康を経営の重要テーマとして位置づけ、代表取締役社長による「健康宣言」のもと、生活習慣病対策やメンタルケア、女性の健康支援など幅広い施策を推進。これらの取り組みは外部からも評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する健康経営優良法人(ホワイト500)に9年連続で認定されている。ウォーキングや体重測定の結果に応じてインセンティブが支給される「グッドコンディションボーナス」など、楽しみながらセルフケアを続けられる施策も実施。さらに、フレックスタイム制やハイブリッドワーク、マタニティ休暇、配偶者の出産休暇、育休延長、ベビーシッター利用料の半額補助など、柔軟な働き方を支える各種制度も整う。
問:LINEヤフー
【CUC(シーユーシー)】
医療現場の誇りと安心を守る
働きやすい職場環境づくり

医療・介護の現場を経営面から支援する企業として、WELLBEING AWARDS 2025を受賞。評価されたのは、現場の献身性に依存せず、業務設計やマネジメントによって医療従事者が無理なく働き続けられる状態を整えている点だ。長時間労働や属人化しやすい医療現場において、組織として負荷を分散し、持続可能な運営を支援する。育児や介護と両立しながら働く社員も多く、グループでは女性管理職の比率は43.2%。また、有給休暇の取得促進や将来の選択肢を広げるためのキャリア支援など、具体的な制度や取り組みを通じて、従業員満足度の向上と離職率の低下を実現している。
問:シーユーシー
【パソナグループ】
本社機能を持つ淡路島から
地方創生へ取り組む

健康経営優良法人のホワイト500に9年連続で認定。淡路島への本社・本部機能の一部移転を象徴とする「地方創生×ウェルビーイング」の取り組みでも知られる。淡路島を「ウェルビーイングアイランド」と位置づけ、飲食・宿泊施設など多様な事業を展開。社員向けに企業内学童保育やインターナショナルスクールをオフィスに併設する他、淡路島に勤務する社員は、主たる業務とともに、音楽や芸術、農業、新規事業を両立する働き方(ハイブリッドキャリア)を実践している。同社の特徴は、健康やウェルビーイングを社員の自己責任にせず、会社として仕組みを整えている点。また、企業のウェルビーイング向上を支援する各種サービスも提供している。
問:パソナグループ
学校の実践最前線
学校現場では、子どもの自律(主体性)を育むことと、教職員(大人)のウェルビーイングを両輪で捉える視点が重要です。また近年は、武蔵野大学にウェルビーイング学部が創設されたことも話題となりました。
【武蔵野大学】
ウェルビーイング社会の実現を担う
日本初の専門学部が誕生

2024年に日本で初めてウェルビーイング学部を開設。ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司教授を学部長に、心理学、哲学、環境科学、健康科学、イノベーション学などの学問領域を横断し、科学的根拠に基づいて「1人ひとりの多様な幸せ」と「社会全体の幸福」を構想し、実装できる人材の育成を目指している。自治体、企業、医療・福祉施設、海外機関などと連携したフィールドワークを重視し、地域や社会実践の現場に身を置き、課題の発見から解決までを実践的に学ぶ教育を展開。急速に変化する社会において、次世代のウェルビーイングを創造し推進する人材を育成する、国内でも稀有なアカデミック拠点として、その取り組みが注目されている。
【新渡戸文化学園】
大人が本気で挑戦する姿が
子どもの幸せを育む

子ども1人ひとりが「自分らしく輝き、幸せを創造できる力」を育むことを目指す、子ども園から短大まで備えた総合学園。「月曜日、行きたくなる学校」を目指し、中高では1日探究の「クロスカリキュラム」、全国の地域とともに創る「スタディツアー」、小学生自身による「ルールづくり・学校運営」、子どもたちが自分で放課後をデザインする「アフタースクール」など、子どもの自律を高める取り組みを実践。また、先生も始業式を遅らせてクラスのチームビルディングを促進し、副業の解禁、残業の削減、休日の増加などを実現。生徒と先生両方のウェルビーイングと、その好循環を生んでいる。日本全国から視察が入る、今注目の学校だ。
問:新渡戸文化学園
【BørneLund PLAY CUBE(ボーネルンド プレイキューブ)】
あそびを通した多様な学びで
自分らしく生きる力を育てる

室内遊び場の運営や、玩具の輸入販売などで知られるボーネルンドが、大阪・うめきた公園内に2025年4月開講した次世代型学習施設。「あそびを原動力にして『成功』より『幸せ』な人生を」をミッションに掲げ、子どもたちが自ら1日の活動を組み立てるのが特徴だ。各々の興味を掘り下げる探究型プログラムや、各界のプロと出会う「本物体験」などの活動は、いずれもあそびの中に教科横断的な要素が含まれている。活動を通して自己肯定感や非認知能力を育み、自分らしい幸福な人生(ウェルビーイング)を自ら創るための土台を築く場所となることを目指している。施設内にはアフタースクールやカフェも併設。
問:ボーネルンド
教えてくれた人
ウェルビーイング経営専門コンサルタント
吉田 忍さん

wellonePJ株式会社代表取締役。NPO法人いきはぐ代表理事。ウェルビーイングの観点からのコーチングとコンサルティングを通して、大手・中小企業や自治体、学校現場のウェルビーイング向上をサポートしている。
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文/岡本いつか
Kids Well-being VOL.1(2026年春号)より転載
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