
2024.05.17
<募集終了>てぃ先生への子育てにまつわる相談や質問を大募集!【てぃ先生の子育てお悩み相談室】
2026.01.22

NPO法人 体験型安全教育支援機構
代表理事
清永奈穂さん

博士(教育学)。放送大学研究助手や英国留学を経て、子どもの安全を研究する(株)ステップ総合研究所を設立。内閣府・警察庁・自治体等の安全対策委員なども務める。2012年にNPO法人体験型安全教育支援機構を設立し、幼稚園・保育園、小学校などで体験型安全教育を実施。著書多数。
子どもの心と身体を守るためには、どんな教育が必要なのだろうか。
「安全教育とは、単に安全に関する知識を教えることだけではありません。とっさに行動できる体力、助けを求めたり協力し合えるコミュニケーション力、そして自分で危険を避ける選択・決断ができる“大人力”を育てていくことです」と清永さん。
これらを総合して「安全基礎体力」といい、それを育てるためには幼児期からの「体験」を通した取り組みが最も重要だという。
体験といっても、わざと危険にさらす必要はない。「まずは、親にぎゅっと抱き締められる“安心感”をたっぷり体験することが大切です」と清永さんは語る。
「それから、外遊びで転ぶとか、友達とけんかとか、日常の中で少しの危険を体験していくこと。親との信頼関係があるほど、子どもも挑戦ができて、危険の避け方も身につけられます」。
そして3歳以上になったら、家の中や近所の道を実際に歩いてチェックしたり、声かけへの対応をロールプレイしたりといった「体験」も大切になる。親子でできる体験を通した対策のポイントを、清永さんに教えてもらった。
幼児期からできる!
「安全教育」のためのSTEP
1 「安心・信頼」の感覚を育てる
まず、日常的なお世話やスキンシップなど、親子の温かい触れ合いを通して、安心・信頼の感覚を持てるようにする。この感覚が自分や人や物を大切に扱う土台になり、危険が近づいたときに見極める力にもなる。
2 「適切な距離」を学ぶ
いろいろな遊びやさまざまな人との関わりを通して、ものや人との距離感を学ぶ。関わることで、家族・友達・知らない人の距離感の違いや、窓・道路・火などとの適切な距離感がわかるようになる。
3 「自分の力の限界」を知る
遊びの中で、自分の力の限界を知る。友達と全力で鬼ごっこをしたり、親とお相撲することなどを通して、子どもは自分にできること、まだできないことを理解し、とっさの行動に活かせるようになる。
4 「危ない」という体験をする
転ぶ、失敗する、小さなけがをするなどのちょっとした危険を、遊びの中で体験する。ヒヤリハットのときに「今危なかったね!」と教えることも大切。ただし、わざと危ない目に遭わせてはいけない。
子どもの死亡事故の半数以上が、実は家の中で起こっている。清永さんが子どもの事故が多い場所を覚えやすくまとめた「あ! おすしやさん」をヒントに、親子で家の中をチェックしてみよう。
あ!
あついものはなにかな?
鍋、フライパン、炊飯器、ポットなど

お
おちるようなところはどこかな?
出窓、掃き出し窓、階段など

す
すべるようなところもあるね
風呂場、ぬれた場所、ビニール袋など
し
しまるようなところもあるよ
洗濯機、ドアのちょうつがいなど

や
やけどするようなところはどこ?
アイロン、ライター、マッチなど

さ
さわったらあぶないものはなに?
包丁、カッター、塩素系洗剤、薬など

ん
ん!? とちゅういしよう!

子どもが家の窓やベランダから転落して死亡する事故が多く発生している。消費者庁の分析によると、子どもの中でも3~4 歳の転落事故が最も多いという。特に窓を開けがちになる3月ごろから事故が増加し始める。事故が発生した状況のグラフも参考に、親子で注意を。
●子どもの転落事故発生時の状況
(n=30)
出典:消費者庁「窓やベランダからの子どもの転落事故に御注意ください!」(令和2年9月4日公表)
不慮の事故の第1位は、1~14歳のどの年齢でも「交通事故」だという。家の中よりさらに目が行き届かない外出時の交通事故を防ぐために、親子で取り組んでおきたいポイントを清永さんに聞いた。
子どもの交通事故の原因で、圧倒的に多いのは「飛び出し」だという。
●歩行中幼児・児童(第1・第2当事者)の法令違反等別死者・重傷者数【令和2年~6年合計】
データ引用:警察庁交通局「令和7年春の全国交通安全運動の実施について」
それを防ぐために清永さんがおすすめするのは「とまと」の合言葉。「とびださない・まわりをよくみる・とまる」の3つを覚えやすくしたものだ。
覚えよう!
交通事故を防ぐ合言葉「とまと」
「子どもって、驚くほど視野が狭いんです。これは意識の問題ではなく身体的な話で、大人が周囲150度見えるのに対して、子どもは90度しか見えません。だから『気をつけて』だけじゃダメで、まずは止まって、右見て、左見て、また右を見て、安全を確認してから進むという習慣づけがとても重要です」。
幼児の視野の狭さを大人が体験するために、清永さんがおすすめするのが「チャイルドビジョン(幼児視界体験メガネ)」。東京都福祉局のHPでは無料でデータを配布しており、印刷したものをのりで厚紙に貼りつけ、はさみで黒線を切り取って組み立てるだけで作れる。ぜひおうちで体験してみよう。
また小学生になると、子どものルール違反ではなくドライバー側が原因となるケースも増えてくる。これをできるだけ避けるために、「通学路や近所の道を実際に一緒に歩いて、危ない場所を親子でチェックしましょう」と清永さん。
そのときのチェックポイントを合言葉にした「しっかりはおみがこう」を、次に紹介。親子で当てはまる場所を確認し、「ここで『とまと』ね!」としっかり伝えていこう。
「見通しが悪いところは気をつけて」などと言っても、子どもにはわからない。清永さん考案の「しっかりはおみがこう」の合言葉をもとに、子どもと実際に歩きながら、危ない場所を具体的に教えていこう。
し
しんごうがないみち
つ
つうこうにん、くるまがおおいみち
か
かどをまがるとき
り
リンリンとじてんしゃがはしってくるとき
は
はくせんのないみち
お
おうだんほどうのないところ
み
まわりがみえにくいところ
が
ガ-ドレールのない せまいみち
こ
こうえんのでいり
う
うんとちゅうい!
歩行中の年齢別死傷者数において、「7歳」が全年齢中で際立って多く、「魔の7歳」とも呼ばれている。学齢期になって、子どもだけの登下校や外出が増えるためだ。子どもが1人行動を始める前に、一緒に危険な場所をチェックし、「とまと」ができるようにしっかり教えておこう。
●歩行中の年齢別死傷者数【令和2年〜6年合計】
出典:警察庁交通局「令和7 年春の全国交通安全運動の実施について」(令和7年3月27日公表)
子どもに対し「声をかける」「手を引く」「後をつける」といった、誘拐や性犯罪などの前兆と捉えられる事案は、全国で年に数千件ほども起きているといわれる。
清永さんが所長を務めるステップ総合研究所が千葉県警や愛知県警と協力して行った研究によると、子どもを狙う犯罪者の7~8割が「きっぱりと断られたら逃げる・諦める」という。
「こういった犯罪者の多くは、子どもなら拒否できないと思って狙っているわけです。だから『嫌です』『ダメです』『行きません』とはっきり断るだけで撃退できることも多いんです」。
とはいえ、犯罪者はあの手この手で子どもの気を引こうとする。知り合いから被害を受けることも少なくない。そんなとき清永さんがおすすめするのが「ロールプレイ」だ。
「声かけにはいろいろなパターンがあり、自分の子ならこの言い方には弱そう、というのがわかると思います。それを親が言って、子どもがきっぱり断る練習をする。相手が知り合いでも断りやすいよう、『お母さんに聞いてきます』などいろいろな応対を教えておくのも効果的です」。
なお、声かけ・犯罪の被害は女児だけでなく男児も多い。男女関係なく取り組もう。
「拒否をする」には練習が必要!
子どもとロールプレイしてみよう
子どもにはハードルの高い「拒否」も、実際に練習して身体で覚えていれば、いざというときに言葉が出やすい。わが子が断りにくそうなパターンを中心に、ごっこ遊びの感覚で親子で練習してみよう。
<大人のセリフ>
■ちょっと触っていい?(チョイ声かけ型)
■お腹痛いからさすって(親切要求型)
■(けがした子に)お医者さんだよ。パンツの中も見せて(権威誇示型)
■言うこと聞かないと痛いことするぞ!(恐怖心あおり型)
<子どものセリフ>
いやです!
<大人のセリフ>
■かわいいね、写真撮らせて(魅惑誘導型)
■一緒に●●を探してくれない?(好奇心触発型)
※●●の例:猫、亀、カブトムシなど
■急いで●●に行かないといけないから案内して(緊急行動要請型)
※●●の例:図書館などの身近な場所
<子どものセリフ>
だめです!
<大人のセリフ>
■●●あげるからうちにおいで(利益供与型)
※●●の例:お菓子、シール、カードなど
■どうしたの、元気ないね。あっちで話聞かせて(身の上相談型)
■お母さんが交通事故に遭ったからついてきて!(緊急事態発生型)
<子どものセリフ>
いきません!
中・高学年は、ケースに合わせて「家の人に聞きます」「大人に頼んでください」など、いろいろな答え方を練習するのも◎!
不審者を見分けるポイントは、「見た目ではなく行動です」と清永さん。怪しい「見た目」より、近づいてくる、見てくる、付いてくる、待ち構えている、話しかけてくるという怪しい「行動」に要注意!
そんな人がいたら、話しかけられる前に「逃げる」ことも大切。ステップ総合研究所の調査によると、もし追いかけられても「20m」逃げきれば、目立つことを恐れて諦める場合が多いという。鬼ごっこ感覚で、「ランドセルを捨てて20m逃げる」という練習をしておこう。
犯罪者は、見つかりにくい場所を選んで子どもに近づく。子どもと一緒に通学路や近所の道を歩きながら、清永さん考案の合言葉「ひまわり」を参考に、注意が必要な場所、避けるべき場所をチェックしよう。
ひ
ひとりだけになるところ
人気(ひとけ)のない公園や駅、公共のトイレ、帰り道で1人になる区間など
ま
まわりからみえないところ
両側が高い塀や木に囲まれている道、ビルとビルの間の裏道など
わ
わかれみち、わきみちのおおいところ
隠れ場所や逃げ道となる分かれ道や裏道、交差点の多い場所など
り!
りようされていないばしょなど、だれもいないところ
空き家、空き地、管理人のいない駐車場など
子どものSOSを見逃さない
親子の信頼関係を築く言葉かけ
どんな対策をしても、危ない目に遭ってしまう可能性はある。危ない目に遭ってしまった時、子どもが親に隠さず被害を伝えられることはとても大切だ。日頃から親子で何でも話せるような関係を作っていこう。
いざ何かあった時は「あなたが不注意だった」などとは決して言わず、「話してくれてありがとう。あなたは悪くないよ」と伝えよう。
文・監修/清永奈穂 絵/石塚ワカメ
発行/岩崎書店
「家の安全」「交通安全」「防犯」を親子で学べる、清永奈穂さんが監修の絵本シリーズ。体験を通した「安全教育」のポイントが満載だ。親子で一緒に読んで、危ない場所のチェックやロールプレイに取り組もう。
小学生にはまんがも!
監修/高橋幸子、清永奈穂 まんが作画/フルカワマモる
発行/KADOKAWA
Kids Well-being VOL.23(2026年春号)より転載